通勤手当を支給しなければならないと定めた法律は無い。それでも、令和元年11月分として通勤手当などを支給した企業は92.3%(厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」、常用労働者30人以上の企業)。諸手当の中でいちばん支給企業割合が高い項目である。
義務が無いのに9割を超える。だから通勤手当の中身は、法律ではなく勤務先の賃金規程を読まないと分からない。
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通勤手当を支給しなければならないと定めた法律は無い。それでも、令和元年11月分として通勤手当などを支給した企業は92.3%(厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」、常用労働者30人以上の企業)。諸手当の中でいちばん支給企業割合が高い項目である。
義務が無いのに9割を超える。だから通勤手当の中身は、法律ではなく勤務先の賃金規程を読まないと分からない。
同じ調査の用語の説明に書かれている定義がこれで、定期乗車券や回数券などによる現物支給も含む。1か月を超える期間を対象に支給されている場合は、1か月分に換算した額で数える。
諸手当という区分の性格も、同じ文書に説明がある。基本給を補充するものとして通勤手当、住宅手当などの名称で支給され、支給条件に該当している場合のみ支給する、賞与等の算定基礎とならない等の性格を持つ賃金。「支給条件に該当している場合のみ」という部分が、通勤手当の条件が会社ごとに違う理由そのもの。
企業規模別に見ると、300〜999人が96.8%で最も高く、100〜299人94.8%、1,000人以上94.4%、30〜99人91.0%。規模が大きいほど高いという単純な形ではない。平成26年11月分では91.7%だったので、5年で0.6ポイントの上昇。
ほかの手当と比べると位置がはっきりする。役付手当などが86.9%、家族手当・扶養手当・育児支援手当などが68.6%、住宅手当などが47.2%。住宅手当の2倍近い割合で支給されている手当が通勤手当で、「あるのが当たり前」に見えるのは、この数字の裏付けがあるため。
支給された労働者1人平均の額は11.7千円(令和元年11月分、1か月分に換算)。企業規模別では1,000人以上が13.3千円、300〜999人11.4千円、100〜299人10.8千円、30〜99人10.3千円で、規模が大きいほど高い。
給与全体の中での位置も押さえておきたい。常用労働者1人平均の所定内賃金は319.7千円、そのうち諸手当が47.5千円で、所定内賃金に占める諸手当の割合は14.9%。通勤手当などの11.7千円は、諸手当47.5千円の4分の1ほど。手当の中では支給企業割合が最も高く、金額では小さいほう。
電車やバスなどの交通機関だけで通勤する場合、非課税になるのは、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額。1か月15万円を超えるときは15万円が限度額になる。新幹線や特急の運賃も、その経路と方法が最も経済的かつ合理的に当たれば含まれるが、グリーン料金は含まれない。
マイカーや自転車で通勤する場合は、片道の通勤距離で金額が決まる。片道2キロメートル未満は非課税になる部分が無く、全額が課税対象。2キロメートル以上10キロメートル未満で4,200円、10キロメートル以上15キロメートル未満で7,300円、15キロメートル以上25キロメートル未満で13,500円と上がっていき、25キロメートル以上35キロメートル未満は19,700円、35キロメートル以上45キロメートル未満は25,900円、45キロメートル以上55キロメートル未満は32,300円。
さらに遠い区分も10キロメートル刻みで続く。55キロメートル以上65キロメートル未満が38,700円、65キロメートル以上75キロメートル未満が45,700円、75キロメートル以上85キロメートル未満が52,700円、85キロメートル以上95キロメートル未満が59,600円で、95キロメートル以上は66,400円が上限。
一定の要件を満たす駐車場等を利用する場合は、駐車場料金相当額(上限5,000円)を加算できる。有料道路を使うなら合理的な料金を加算でき、その場合の上限も15万円。交通機関とマイカーを併用するときも、合計で1か月15万円まで。限度額を超えて支給された部分は給与として課税され、支給した月の給与に上乗せして源泉徴収される(令和8年4月1日現在の法令等)。
所得税で非課税でも、社会保険料の計算からは外れない。日本年金機構の説明では、厚生年金保険法上の報酬は事業主から労働の対価として受けるもので、名称を問わず含まれる。事業所の給与規定に定めがある通勤手当は労働の対価と認められ、標準報酬月額の算定対象になる。
数か月分をまとめて支給される形も、支払い上の便宜とみなされる。3か月を超える周期で支給される場合でも、報酬として扱われる。
つまり、通勤手当が月1万円増えると、所得税はかからないまま、健康保険料と厚生年金保険料の計算基礎は上がる。得も損も小さいが、ゼロではない。
残業代の計算になると、通勤手当は外す側に回る。労働基準法37条で割増賃金の基礎となる賃金から除外できるとされているのは7つ。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金。
ただし名称だけでは決まらない。独身でも家族手当が支払われるように、条件を問わず一律に支払われる賃金は、上の名称に当てはまっていても算入しなければならないと厚生労働省の労働局が説明している。通勤距離に関係なく全員へ同額を払う「通勤手当」があるなら、それは残業代の基礎に入る可能性がある。
通勤手当が対象にするのは、自宅と勤務先のあいだの移動にかかる費用。出張や取引先への移動でかかる費用は、通勤の費用ではないので別の科目で処理される。給与明細で「通勤手当」と「旅費交通費」が分かれているのは、この線が引かれているから。
名前のほうは統一されていない。交通費、通勤費、通勤交通費。どれも就業規則の中で定義されているので、呼び名より条文を読む。
自分の通勤手当は、6つの項目で測れる。賃金規程を開いて順に確かめる。
このうち上限額と計算の基礎が分かれば、通勤経路が変わったときに手取りがどう動くかを自分で計算できる。
給与明細の通勤手当の額を、全国平均の11.7千円と並べてみる。ずれていても、それは通勤距離と交通機関の違いで説明がつく範囲かもしれない。確かめるのは額そのものより、規程の条文と自分の通勤実態が合っているかどうか。
もう1つ測れるのは、通勤そのものの時間。片道何分かかり、その時間が1か月でどれだけになるか。4週ぶん記録すると、手当の額では埋まらない部分が数字で出る。
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