メンター制度は、直属の上司とは別の先輩社員と定期的に話す関係を、会社の決めごととして置いたもの。厚生労働省のマニュアルは、守秘義務・相談窓口・就業時間内の3つを最低限決めておくべき運用ルールとし、期間や面談の頻度など7項目を各社が任意に決めるものとして並べている。自分が対象になったときに効いてくるのは、この合わせて10個のうち、どれが会社で決まっていて、どれがペアに任されているかという切り分けだ。
メンター制度とは、10の決めごと
公開 約 7 分

メンターとメンティーは、支援の向きで分かれている
マニュアルの定義では、経験豊かな先輩社員(メンター)が双方向の対話を通じて、後輩社員(メンティ)のキャリア形成上の課題解決や悩みの解消を支援し、個人の成長をサポートする。支援する側がメンター、支援を受ける側がメンティ。検索では「メンティー」と伸ばす表記も使われるが、同じ役を指す。マニュアルの表記はメンティで統一されている。
この活動そのものをメンタリングと呼ぶ。制度というのは、誰と誰を組ませ、いつまで、どの頻度で会うかを会社が決めて社内に知らせる枠のことで、関係の中身まで決めるものではない。
指示・命令の線の上にある関わり方(上司の指導、OJT、コーチング)とどこで分かれるのかは、メンターの定義のほうに書いた。
最低限の3つは、守秘義務と相談窓口と就業時間内
マニュアルが「最低限決めておくべき運用ルール」として挙げるのは3つだけだ。メンタリングで話し合われた内容を口外しないという守秘義務を守ること。メンタリングにおいて不都合が生じたときの相談窓口を設けること。メンタリングも業務の一環と位置づけ、原則として就業時間内に行うこと。
3つ目は、面談が休憩時間や終業後に押し出されていないかという話に直結する。業務の一環と書かれている以上、勤務時間の中に置くのが原則。
相性が合わないときの行き先が2つ目の相談窓口で、マニュアルはこれを制度の側が用意するものとしている。ペアの当事者同士で解決する前提にはなっていない。自分の会社の案内に窓口の記載がなければ、そこが決まっていない。
任意の7項目が、面談の形を決めている
残りは各社の判断で決まる。マニュアルは7項目を表で並べ、それぞれに基本的なパターンを添えている。
| 決める項目 | 挙げられているパターン |
|---|---|
| メンタリング期間 | 3か月未満 / 3か月以上〜6か月以内 / 7か月以上〜1年以内 / 1年超 |
| 対話の頻度と時間 | 1回30分〜2時間程度、1か月に1回以上 / 2か月に1回 / ペアに任せる |
| 対話・コンタクトの方法 | 社内で対面 / 社外で対面 / Web会議 / メール、SNS / 電話 |
| 対話の内容・テーマ | ペアに任せる / メンティから提示 / メンターから提示 / 推進部門が案を提示 |
| 対話後の進捗フォロー | 毎回の対話後に推進部門へ報告 / 必要に応じて報告 / 意見交換会の開催 |
| 期間終了後の振り返り | 合同報告会 / アンケート / 個別ヒアリング |
| 交通費・通信費等の費用の精算 | — |
期間について、マニュアルは導入目的に応じて設定するものとし、能力開発が目的なら、メンティが実際に行動を起こしてそれに対する助言を受ける時間を見て1年程度は必要と書いている。3か月の制度と1年超の制度では、できることが違う。
対話の方法は、Web会議を含めて対面が原則。開始時は信頼関係の構築が要るので、できる限り対面の機会を設けると書かれている。Web会議のときは、周囲に聞かれたくない話が出ることを見て、参加する場所に配慮する注意も添えられている。
テーマの決め方が4つに分かれているのは、メンティの側に問題意識が固まっていない場合を想定しているため。メンティの主体性が弱かったり問題意識が明確でないと満足を得られないことがあり、その場合はメンターか推進部門がテーマを出す形も有効だとしている。話すことが決まらないまま面談の時間が来る、という状態は制度の側も見込んでいる。
話した内容の行き先は、進捗フォローの欄で決まる
7項目のうち、話せる範囲に最も効くのが進捗フォローの決め方だ。毎回の対話後に面談ワークシートで推進部門に報告する形、必要に応じて面談や電話やメールで報告する形、メンターとメンティそれぞれを集めた意見交換会を開く形。報告が毎回上がる設計なら、推進部門はシートをもとに進捗を把握し、第三者からの支援が必要かを判断する。
守秘義務は口外しないという約束で、推進部門への報告経路とは別に置かれている。両方が同時に決まっているなら、どこまでがワークシートに書かれる前提なのかを初回に確認しておく。
期間が終わったあとにも、アンケートやヒアリング、合同報告会が置かれることがある。終了後に何が聞かれるかは、始まる前に決まっている。
導入した53社が目的に挙げたのは、キャリアの不安の解消
厚生労働省の委託調査(令和5年度 個々の女性労働者のキャリア形成支援事業 企業アンケート、令和6年3月)は、メンター制度を導入した企業に目的を複数回答で聞いている。答えた53社のうち、挙げた割合の高い順に並べるとこうなる。
- 「キャリアや仕事に関する不安や悩みの解消」84.9%
- 「モチベーション向上の支援」79.2%
- 「知識・スキル獲得の支援」66.0%
- 「仕事と育児の両立に関する不安や悩みの解消」62.3%
- 「定着率の向上」62.3%
- 「職場環境への適応のための支援」54.7%
上の3つは、仕事そのものの指導ではなく、仕事をどう続けるかに寄っている。制度の案内に「相談相手」と書かれるのは、この目的の立て方から来ている。
母数は53社。制度を入れている企業に限られ、女性社員の活躍推進という文脈で行われた調査なので、日本企業全体の割合としては読めない。同じ調査で、効果があったと答えた割合は目的より7〜10ポイント低く出ている。その差はメンターの定義のほうで扱った。
メンティ側にも選定基準がある
対象者の決め方は3つ。目的に照らして公正に選定して指名する、自薦で募る、他薦(上司や人事部門からの推薦)で候補者を募って選考する。対象者が少ない場合は全員を対象とし、意欲の高い層を引き上げたい場合は手上げ制にする方法も挙げられている。
メンターの選定基準としてマニュアルが並べるのは、高い能力と業務実績を有し経験が豊富であること、人材育成の重要性を理解していること、仕事の優先順位がつけられ時間管理ができていること、人として信頼でき誠実であること、傾聴しながらアドバイスすることが得意なこと、社内に人脈があり必要に応じて紹介できること。
メンティの側にも基準が書かれている。キャリア開発に意欲的で自らの意思で取り組んだ実績があること、メンターと信頼関係を築くことができるコミュニケーション能力、決めたことを実行できる行動力、相手を尊重して助言を受け入れられること、自分自身をある程度客観的に振り返ることができること。
選ばれる側も見られている。マッチングのほうは、事前にアンケートやヒアリングで個別の情報を集めてミスマッチを防ぐ、メンティのキャリア志向にメンターの経歴が合うかを見る、という手順が示されている。希望を出せる仕組みになっているなら、何を聞きたいかを先に言葉にしておくと組み合わせに反映される余地がある。
自分の職場で確かめる
案内の紙やイントラの説明を見て、10項目のうちどれが書かれていてどれが書かれていないかを数えると、その制度が何を決めている枠なのかが見える。期間と頻度、報告の有無、窓口の有無。この3つが書かれていないときは、初回の面談で聞く内容になる。
面談で話す中身の組み立ては1on1で上司に何を話すか、相談相手が1人増えても経路が増えたとは限らない話は上司に相談できないのはどの段かにある。
workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。人から反応が返ってくる量、人と接する量、学ぶことの量は、それぞれ別の項目として聞く形にしてある。メンターが付いた前と後で、どの項目の答えが動いたかを見るための記録。





