人事異動はいつか、打診は1か月前後

人事異動の時期を決めているのは、法令ではなく会社ごとの運用だ。労働政策研究・研修機構が企業1,852社に聞いた調査では、転勤に関するルールを明文化して定めている企業は11.6%、明文化していないが運用上のルールがある企業は10.1%で、76.4%は定めていないと答えている。本人への打診の時期を決めている会社では、国内転勤の場合「2週間超〜1ヵ月前」が34.9%、「1ヵ月超〜2ヵ月前」が32.5%に集まる。

人事異動という言い方は、所属部署の変更、勤務地の変更、出向、役職の変更をまとめて指す。時期の決まり方は、このどれかによって変わる。

内示、発令、赴任。日付は3つある

「いつ」と聞くとき、指しているのは3つのうちのどれかだ。異動が社内で決まったあと、全体への発表より前に本人へ伝えられるのが内示。辞令として出され、命令の効力を持つのが発令。実際に新しい所属で働き始める日が赴任日。

このうち本人が最初に知るのは内示で、ここから発令までの間に、事情を伝えたり引き継ぎの段取りを組んだりする時間がある。間隔は会社によって違う。発令の当日に知らされる運用もあれば、2か月前に打診する運用もある。

時期の決まりを文字にしている会社は、2割

さきほどの調査をもう少し細かく見る。労働政策研究・研修機構の「企業の転勤の実態に関する調査」は、2016年8月19日から9月9日に、常用労働者300人以上の企業1万社へ調査票を配り、1,852社から回答を得た(回収率18.5%)。転勤に関するルールの規定について、答えはこう割れている。

転勤に関するルール 割合(n=1,852)
明文化して定めている 11.6%
明文化していないが運用上ルールがある 10.1%
定めていない 76.4%
無回答 1.9%

正社員規模が1,000人以上の企業では明文化が13.7%、運用上のルールが14.8%で、300人未満では9.8%と4.1%。規模が大きいほうが文字になっている。

ルールが「ある」と答えた402社に内容を複数回答で聞くと、転勤の期間(長さ)が53.2%、転勤する地域・ブロックが28.4%、転勤の時期(年齢、勤続年数、役職など)が25.1%。期間は決めても、誰がいつ動くかは決めていない会社のほうが多い。

打診は2週間前から2か月前に集まる

同じ調査は、転勤前の打診を何日前までに行うこととしているかも聞いている。「該当する転勤がない」と無回答を除いた1,399社の分布はこうなる。

  • 「2週間超〜1ヵ月前」34.9%
  • 「1ヵ月超〜2ヵ月前」32.5%
  • 「1週間超〜2週間前」13.3%

7割弱が2週間前から2か月前の幅に入る。海外転勤では後ろに寄り、599社のうち「1ヵ月超〜2ヵ月前」30.7%、「3ヵ月より前」30.4%、「2ヵ月超〜3ヵ月前」23.9%。住居と家族の段取りに要る時間が、そのまま幅になっている。

この調査が対象にしているのは転居を伴う異動だ。同じ事業所の中で所属部署が変わるだけの異動は、この集計に入っていない。

周期は、ジョブローテーションがあるかどうかで分かれる

何年ごとに回ってくるかは、系統的な配置換えを運用しているかどうかで変わる。1,852社のうちジョブ・ローテーションが「ある」と答えたのは983社、「ない」が855社。「ある」企業では転勤ルールを明文化している割合が14.2%、「ない」企業では8.7%にとどまる。

回す仕組みを持っている会社は、文字にする率も高い。自分の会社がどちらかは、新卒採用のページや人事制度の説明資料に「ジョブローテーション」の語があるかで、おおむね見分けられる。

組織の体制そのものが何年ごとに変わるかは体制が変わるのは何年ごとかに書いた。異動の周期は、この体制変更の周期と連動することがある。

契約書に書いてあるのは範囲で、時期ではない

2024年4月以降に労働契約を結んだ人と有期契約を更新した人には、就業場所と従事すべき業務の「変更の範囲」が書面で明示されている。改正労基則第5条第1項第1号の3による明示事項だ。ここに入るのは今後の見込みを含めた変更の範囲で、変更の時期や頻度は明示事項に含まれていない。

つまり、どこまで動く可能性があるかは書面から読めるが、いつ動くかは読めない。断れるかどうかの判断材料は転勤の拒否は2枚の書面で決まるにまとめた。

自分の職場で数える

時期を知る手がかりは、社内に残っている。集めるのは3つ。

過去3年ぶんの異動の社内通知と、その日付。これを並べると、4月1日に集まっているのか、期の切り替わりごとなのか、不定期なのかが出る。次に、自己申告書や面談シートの提出月。希望を出す機会が年に1度なら、その提出から発令までの間隔が、会社が検討に使っている時間になる。3つ目は、自分の部署で過去に出た辞令の日付と赴任日の間隔。1週間なのか1か月なのかで、知らされてから動くまでに使える時間が見える。

本人の希望がどれくらい反映されているかの全国の数字は異動の本人希望の反映割合にある。

自分の職場で確かめる

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。変化の速さ、仕事の進め方をどこまで自分で決められるか、学ぶことの量。異動の前に答えておくと、異動後の答えと並べて、どの項目がどちら向きに動いたかを見られる。3つの日付を控えておくと、その変化がいつ始まったかも残る。

出典

  1. 企業の転勤の実態に関する調査(調査シリーズNo.174。図表2-2-5 転勤に関するルールの規定の有無、図表2-2-6 ルールの内容、図表2-2-7 転勤前の打診時期)/労働政策研究・研修機構/2016年8月19日〜9月9日実施・企業1,852社(回収率18.5%)/2017年公表
  2. 調査シリーズNo.174『企業の転勤の実態に関する調査』概要/労働政策研究・研修機構/2017年公表
  3. 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(就業場所・業務の変更の範囲の明示。改正労基則第5条第1項第1号の3)/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署/2024年