ウェルビーイングは、心と体と人間関係の3つが満たされた状態を指す。文部科学省は第4期教育振興基本計画の資料で、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念、と書いている。訳語は「幸福」が当てられることが多いが、瞬間の気分より射程が長い。国はこの状態を0〜10点の点数で測っていて、2025年の平均は5.79点だった。
ウェルビーイングとは、測り方が2層ある
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語の出どころは、WHO憲章の健康の定義
もとは1946年のWHO憲章にある well-being。日本WHO協会の訳では、健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます、となる。病気の有無だけで健康を測らない、という宣言から始まった語。
ここから2つのことが決まる。測る対象が体の状態に限られないこと。そして、満たされているかどうかを答えるのは本人だということ。
どう測るか。0〜10点の11段階
内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」は、現在の生活にどの程度満足しているかを11段階で聞く。「全く満足していない」を0点、「非常に満足している」を10点とする目盛り。2025年調査は3月14日から31日にかけて、日本国内に住む15〜89歳のインターネットパネル登録モニター10,633人が答えた。
点数の分布はこうなっている。最頻値は8点(17.8%)、ついで7点(17.4%)、5点(16.9%)。全体の約66%が5〜8点に集まる。平均5.79点という1つの数字の裏で、山は8点のあたりと5点のあたりに2つある。
この調査は点数を2層で持つ。第1層が生活全体についての総合主観満足度、第2層が「家計と資産」「健康状態」「仕事と生活(ワークライフバランス)」など13分野の満足度。分野別の点数で、生活全体の満足度の7割弱を説明できる。
雇用形態で0.23点ひらく
就業者を雇用形態で割ると、2025年の生活満足度は正規雇用が5.76点、非正規雇用が5.53点。差は0.23点で、どちらも前年から統計上有意に下がっている(正規0.09ポイント、非正規0.14ポイント)。
全体では5.89点から5.79点へ0.10ポイントの低下。年齢階層別でも地域別でも同じ向きで、三大都市圏ではミドル層が、地方圏では若年層が、それぞれ全体の低下に大きく寄与したと報告書は書いている。0.23点という差は、点数の目盛りが1点刻みであることを思い出すと小さい。
職場に近い分野は、上がっていた
分野別に前回調査からの動きを見ると、上がった分野と下がった分野が分かれる。上がったのは「雇用環境と賃金」「仕事と生活(ワークライフバランス)」「自然環境」。下がったのは「健康状態」「自身の教育水準・教育環境」「社会とのつながり」「子育てのしやすさ」など。
13分野で生活満足度を重回帰分析すると、係数が最も大きいのは「生活の楽しさ・面白さ」で、次が「家計と資産」(0.244)。「雇用環境と賃金」の係数は0.057で、同じモデルの中ではかなり小さい(サンプル10,633、修正済み決定係数0.670)。
言えないことを書いておく。係数が小さいからといって、賃金や職場が生活満足度に効かないとは読めない。同じ時点の回答どうしを並べた関係であって、原因と結果の向きは分からない。満足度の高い人が職場の評価も高くつける、という逆向きの説明も残る。
「認められている」は、満足度より低く出る
2025年調査では、生きがいに関わる5つの設問が新しく加わった。「充実した人生を送れている」「人々に認められている」「人々や社会の役に立っている」「人と違うことを言っても受け止めてもらえる」の4つは、生活満足度より平均点が低い。
分布の形も違う。生活満足度は8点と5点に山が2つある形だが、この4項目はいずれも最頻値が5点の一山型で、真ん中に密度が集まる。持続する幸福のうち、承認や居場所に当たる部分は、生活全体の満足度ほど高く出ない。
このうち「人と違うことを言っても受け止めてもらえる」は、職場で測られてきた指標と重なる。心理的安全性とはで扱った尺度が、ほぼ同じことを聞いている。仕事そのものへの没入の度合いはワークエンゲージメントとはに書いた。
職場の「ウェルビーイング」は、分野に割ると数えられる
勤め先が制度や福利厚生の話として使うときも、測るときは分野に割る。会社が集計する満足度調査の値は従業員満足度の平均に整理した。全社の平均点が自分の点数と一致しないのは、そもそも分野の重みが人ごとに違うため。
自分の点数は、月1回で足りる
本人が測るなら、分野を分けて0〜10点をつける。仕事の中身、時間の使い方、人との関係、収入。4つを月1回、同じ目盛りで記録する。
4か月ぶん貯まると、動いた分野と動かなかった分野が分かれる。全体の点数が下がった月に、どの分野が引っ張ったのか。国の調査が13分野に割り、そのうえで分野別の点数と客観指標を突き合わせられるようにダッシュボードを組んでいるのは、総合点を1つ眺めただけでは手の打ちどころが出てこないからだ。記録は4週から。





