ワークライフバランスとは、3つの社会像

ワークライフバランスは「仕事と生活の調和」の訳語で、国が定義を文書に置いている。平成19(2007)年12月18日に仕事と生活の調和推進官民トップ会議が策定した憲章が出どころ。そこでは、国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会、と書かれている。時間を半分ずつに割ることを指す語ではない。

定義は3つの社会の姿に分けられている

憲章は、調和が実現した社会を3つの姿で示している。

  1. 就労による経済的自立が可能な社会。経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、暮らしの経済的基盤が確保できる
  2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会。働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる
  3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会。個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている

1番目に就労による経済的自立が置かれている点が、この定義の形を決めている。働く量を落として時間を空けるだけでは、憲章のいう調和にならない。収入と時間と選択肢の3つが同時に条件になっている。

国の測り方は、13の指標に割られていた

憲章と同じ日に作られた行動指針には、数値目標が別紙として付いている。平成28(2016)年3月7日の一部改正版で設定されているのは13項目。目標の期限は2020年で、現状値は2014〜2015年ごろの値だ。

指標 現状値(当時) 2020年の目標
週労働時間60時間以上の雇用者の割合 8.2% 5%
年次有給休暇取得率 47.6% 70%
短時間勤務を選択できる事業所の割合 14.8% 29%
第1子出産前後の女性の継続就業率 38.0% 55%
男性の育児休業取得率 2.30% 13%
6歳未満の子をもつ夫の育児・家事関連時間 1日67分 1日2時間30分
自己啓発を行っている労働者の割合(正社員) 43.3% 70%

労働時間、休暇、勤務形態、健康、育児、学び。6つの領域に散っている。就業率やフリーターの数のように、個人の職場ではなく労働市場の全体を見る指標も同じ表に並んでいて、1つの点数で調和の度合いを測る仕組みにはなっていない。割ってから数える。

有給取得率は66.9%、目標は70%だった

13指標のうち、いま最も追いやすいのが年次有給休暇取得率だ。令和7年就労条件総合調査で、令和6(2024)年1年間の取得率は66.9%。付与日数は労働者1人平均18.1日、取得日数は12.1日で、どちらも昭和59(1984)年以降で最も高い水準になった。

行動指針の目標は70%。期限の2020年には届かず、2024年実績でまだ3.1ポイント足りない。取得率の数え方と推移は有給取得率の平均に、付与日数の決まりは有給休暇は何日かに書いた。

「ライフ」に入るのは、育児と介護だけではない

憲章の2番目の姿は、家族・友人などとの充実した時間と並べて、自己啓発や地域活動への参加のための時間を名指ししている。行動指針の指標にも自己啓発が入っていて、正社員の43.3%から70%への引き上げが目標に置かれていた。

だから、子どもや介護の予定が無い人にとってこの語が関係ない、とはならない。学ぶ時間、体を動かす時間、人と会う時間。どれも2番目の姿に含まれる。制度の案内では育児休業や介護休業が前に出るので、自己啓発や地域活動のための時間までが同じ定義の中に入っていることは、憲章の文面を読まないと見えにくい。

制度があることと、使えることは別の数字

指標の多くは会社単位で数えられている。短時間勤務を選択できる事業所の割合14.8%というのは、制度の有無の集計で、その事業所の全員が使えるという意味ではない。要件を満たすかどうかは別に決まる。

時短勤務の対象になる条件は時短勤務の条件、始業と終業を自分で動かせる制度の中身はフレックスタイム制とは、働く場所の区分はテレワークとはにまとめた。

自分で測るなら、4週ぶんの時間

国の指標を自分の職場に当てはめるには、時間を数えるのがいちばん早い。週の労働時間、有給を使った日数、始業終業を自分で変えた回数、休日に仕事に触れた時間。この4つを4週ぶん書き出す。

平均と比べたいときの目安は、残業時間の平均の月9.8時間と、年間休日の平均の112.4日。自分の数字が平均から離れていることと、自分に合っていないことは同じではない。どれくらいの時間を仕事の側に置きたいかは人によって違うので、記録が4週ぶん貯まってから、自分の希望と並べる。

出典

  1. 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章(平成19年12月18日 仕事と生活の調和推進官民トップ会議策定、平成22年6月29日一部改正。調和が実現した社会の定義と3つの姿)/内閣府
  2. 仕事と生活の調和推進のための行動指針 別紙1 数値目標(平成28年3月7日一部改正。週労働時間60時間以上8.2%→5%、年次有給休暇取得率47.6%→70%、短時間勤務を選択できる事業所14.8%→29%など13指標、2020年目標)/内閣府
  3. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(第5表 年次有給休暇。令和6年1年間の付与18.1日・取得12.1日・取得率66.9%)/厚生労働省/調査客体6,448社・有効回答3,820社(59.2%)