転勤とは、転居を伴う配置の変更

転勤とは、転居を伴う配置の変更をいう。厚生労働省が2017年に公表した「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」は、生活の本拠が変わることの影響に着目してこの意味で語を使い、注でもう1つの使い方にも触れている。転居を必要としない場合を含め、労働者の就業場所の変更を伴う配置の変更について用いられる場合。つまり同じ語が、引っ越しを含む変更だけを指すときと、勤務地が変わること全部を指すときがある。話が食い違うのはここ。

語の範囲は2段ある

厚生労働省の資料の定義で読むと、同じ市内の別の事業所へ移る異動は転勤に入らない。生活の本拠が変わらないため。社内の辞令や求人票で「転勤あり」と書かれているときは、どちらの意味で使われているかを確かめないと、引っ越しの有無が分からないまま話が進む。

転勤は異動の一形態として位置づけられている。配置の変更という大きな枠の中に、転居を伴うものとして置かれている。だから「異動」と言われた話に転勤が含まれていることもあり、逆に「転勤」の辞令で引っ越しが要らないこともある。定期の人事異動の仕組みそのものはジョブローテーションとはにまとめた。

出向は、別に書かれる。2024年の労働条件明示の記載例では、業務の変更の範囲を書く欄に「ただし、出向規程に従って出向を命じることがあり」という書き方の例が載っていて、転勤の範囲とは別の行として扱われている。

命令を拒めるかは、就業規則と合意で決まる

転勤を含む配置の変更は、労働契約上の職務内容・勤務地の決定権限(配転命令権)に基づいて行われる。裁判例の現状について、厚生労働省の資料はこう整理している。就業規則に定めがあり、勤務地を限定する旨の合意がない場合には、企業が労働者の同意なしに勤務地の変更を伴う配置転換を命じることが広く認められているのが現状である。

同意が要らない、と読める書き方。ただし同じ資料は、下級審では労働者の育児や介護などの事情に対する配慮の状況等を判断に際して考慮する例もみられる、と続けている。拒めるかどうかを自分で判定する前に見る書面は2つで、就業規則の配転に関する条文と、自分の契約書の勤務地の欄。

2024年4月から、変更の範囲が書面に書いてある

自分に転勤があるのかどうかは、労働条件通知書か雇用契約書で確かめられるようになった。改正労基則第5条第1項第1号の3により、雇入れ直後の就業場所と業務に加えて、就業場所と従事すべき業務の「変更の範囲」を書面で明示することが必要になっている。対象は2024年(令和6年)4月1日以降に契約を締結・更新した労働者で、無期契約だけでなく、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された人も含まれる。

厚生労働省が示した記載例は、限定の程度で4つに分かれる。

限定の程度 就業場所の変更の範囲の記載例
限定がない 会社の定める営業所
一部に限定がある 東京本社、大阪支社及び名古屋支社/愛知県内
完全に限定 旭川センター/変更なし
一時的に限定がある 会社の定める支店(ただし会社の承認を受けた場合はAブロック内の支店)

「会社の定める営業所」と書かれていれば、転勤の範囲は会社の事業所の全部。「愛知県内」なら、転居を伴う異動が起きる余地は県内に限られる。「変更なし」なら動かない。契約書のこの1行が、自分に起こり得る勤務地の変更の上限になっている。

含まれないものも決まっている。臨時的な他部門への応援業務や出張、研修のように就業の場所が一時的に変わるものは、変更の範囲に入らない。テレワークは逆で、労働契約の期間中に行うことが通常想定される場合には、変更の範囲として明示することになっている。自宅やサテライトオフィスのように、場所まで書く形。

契約書のどの欄に何が書かれるかは雇用契約書の書き方に整理した。

配慮を定めた規定が2つある

育児・介護休業法第26条は、企業が就業場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合に、これにより育児や介護が困難となる労働者がいるときは、その育児や介護の状況に配慮することを規定している。配慮の義務で、転勤を禁じる規定ではない。

男女雇用機会均等法第7条のほうは、性別による間接差別を禁じている。省令が列挙する措置のうち2つが転勤に関わる。募集、採用、昇進または職種の変更にあたって、転居を伴う配置の変更に応じられることを要件とすること。昇進にあたって、異なる事業場間の配置の変更の経験があることを要件とすること。合理的な理由がない限り、どちらも性別による間接差別になる。

自分の職場で確かめる

転勤の可能性を数として持つなら、材料は3つ。契約書の「変更の範囲」の文言、就業規則の配転に関する条文、それに自分の部署で過去3年に出た転勤の件数。3つ目は社内の異動発表を数えれば出る。

本人の希望がどれくらい反映されているかの全国の数字は、異動の本人希望の反映割合にまとめた。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。働く時間と場所の自由度は、そのうちの1つ。自分の答えと同じ職場の人の答えを並べて、どこがずれているかを見る形にしてある。

出典

  1. 転勤に関する雇用管理のヒントと手法(厚生労働省、2017年3月)
  2. 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署、2024年)