転勤を経験した正社員5,827人のうち、直近の国内転勤について「満足している」「やや満足している」と答えた人は78.0%。転勤を経た後に職業能力が上昇したと答えた人は75.4%。労働政策研究・研修機構が2016年に実施した「企業の転勤の実態に関する調査」の数字で、転勤のメリットとして語られるものは、だいたいこの2つの指標に集まる。
ただし同じ調査で、転勤があることにより介護がしづらいと答えた人は75.1%いる。得るものと失うものが、ほぼ同じ高さで並んでいる調査。
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転勤を経験した正社員5,827人のうち、直近の国内転勤について「満足している」「やや満足している」と答えた人は78.0%。転勤を経た後に職業能力が上昇したと答えた人は75.4%。労働政策研究・研修機構が2016年に実施した「企業の転勤の実態に関する調査」の数字で、転勤のメリットとして語られるものは、だいたいこの2つの指標に集まる。
ただし同じ調査で、転勤があることにより介護がしづらいと答えた人は75.1%いる。得るものと失うものが、ほぼ同じ高さで並んでいる調査。
この調査が「転勤」と呼んでいるのは、転居を伴う異動だ。転居を要しない勤務地の変更は入らず、転居を伴うなら出向も含まれる。同じ市内の別の事業所へ移る異動は、この数字の外にある。語の範囲が2段あることと、契約書の「変更の範囲」の読み方は転勤とはにまとめた。
職業能力の変化も満足度も、本人の自己申告だ。「職業能力が上がった」「やや職業能力が上がった」「あまり変わらない」「やや職業能力が下がった」「職業能力が下がった」の5段階で聞き、上の2つを合わせたものが「上昇した」として集計されている。資格や昇給のような外から測れる指標ではない。
対象にも偏りがある。正社員調査は、調査対象企業で転勤を経験した正社員に配られた。転勤のない職場の人、転勤を断った人、転勤を機に辞めた人は入っていない。配付8万人に対して有効回収は5,827人で、回収率7.3%。残って答えた人の構成だという前提で読む数字になる。企業調査のほうは常用労働者300人以上の企業1万社に配り、1,852社から回答を得ている(回収率18.5%)。
国内転勤を経験した5,431人のうち、転勤後に「職業能力が上がった」が31.6%、「やや職業能力が上がった」が43.8%で、合わせて75.4%。「あまり変わらない」が20.1%、低下したとする人は3.1%にとどまる。海外転勤では上昇が86.5%とさらに高い。
上がり方は、転勤先で何をしたかで変わる。転勤前と全く異なる仕事に就いた人の67.7%、一部異なる仕事に就いた人の64.8%が、仕事の難易度が「上がった」と答えた。転勤前と同じ仕事のままだった人では41.2%。国内転勤全体では59.4%が難易度の上昇を挙げている。
つまり、場所が変わること自体ではなく、担当が変わることのほうが効いている。同じ仕事を別の土地で続ける転勤なら、能力の面で起きることは小さい。
直近の転勤経験の満足度は、国内転勤で「満足・計」78.0%、「不満足・計」19.5%。海外転勤では満足が83.1%だった。仕事の難易度が上がったと答えた人ほど満足度が高く、職業能力が上昇したと答えた人ほど満足度が高い、という関係も出ている。
5人に1人は不満足の側にいる。この19.5%を無視して平均だけを見ると、転勤の判断材料にはならない。
現在の会社の転勤について、3つの文にどれくらい当てはまるかを聞いた結果が次の通り。「そう思う」と「ややそう思う」の合計(n=5,827)。
| 文 | そう思う・計 |
|---|---|
| 転勤は人脈形成の機会となっている | 85.6% |
| 転勤は職業能力の向上に効果がある | 69.9% |
| 転勤経験は昇進・昇格の検討材料として必要 | 55.6% |
人脈がいちばん高く、昇進との結びつきがいちばん低い。転勤を昇進の条件と見ている人は半数強で、残りは「どちらともいえない」以下に分かれている。転勤を重ねれば役職が上がる、という形の認識は、転勤経験者の中でも共有されていない。
企業の側が転勤に伴って支給する手当・旅費等を複数回答で聞くと、「転勤にかかわる支度料(引っ越し代金の負担含む)」が73.5%で最も多い。次いで「転勤先での社宅提供(家賃補助含む)」68.6%、「転勤交通費」65.1%、「単身赴任手当(別居手当)の支給(毎月支給)」64.1%、「単身赴任者に対する帰省旅費」55.1%。
年収そのものに差がついている場合もある。勤務地限定正社員の雇用区分がある企業で、その区分と全国転勤型との年収差(給与・賞与を含む)を聞くと、「5〜10%未満」27.4%、「10〜15%未満」25.3%、「0超〜5%未満」12.7%、「処遇差はない」13.0%。10%以上の差があるとした企業は43.8%だった。年収差の理由としては「社員の納得性」が46.9%で最も多い。
転勤を引き受ける側に乗っている上積みは、手当と、この年収差。どちらも会社によって有無が分かれるので、自分の就業規則と給与規程で確かめる以外にない。
転勤があることで困難に感じることを6つの文で聞いた結果(n=5,827、「そう思う・計」)。
| 困難に感じること | そう思う・計 |
|---|---|
| 介護がしづらい | 75.1% |
| 持ち家を所有しづらい | 68.1% |
| 進学期の子供の教育が難しい | 65.8% |
| 育児がしづらい | 53.2% |
| 子供を持ちづらい | 32.4% |
| 結婚しづらい | 29.3% |
「子供を持ちづらい」「結婚しづらい」「育児がしづらい」は、男性より女性のほうが高い。広域異動が多い会社のほうが、ブロック内の転勤が多い会社より困難を感じる割合は高くなる。
介護の75.1%と、能力が上昇した75.4%。同じ調査、同じ回答者で、ほぼ同じ高さ。転勤のメリットは、いま自分が抱えている事情と引き換えに出てくるもので、20代の独身期と、親の介護が始まった50代とでは、同じ辞令の意味が変わる。だから「転勤はメリットがあるか」という問いには、一般解がない。あるのは、自分の今の条件で釣り合うかどうかだけ。
自分の場合の見積もりに使える材料は4つ。就業規則と給与規程に書かれた転勤手当・社宅・帰省旅費の条件、自分の会社に勤務地限定の雇用区分があるか、転勤先で担当が変わるのか同じ仕事を続けるのか、それに過去3年で自分の部署から出た転勤の件数。3つ目は打診のときに聞けば分かる。能力の変化は、担当が変わるかどうかで大きく違っていた。
workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。働く時間と場所の自由度は、そのうちの1つ。自分の答えと同じ職場の人の答えを並べて、どこがずれているかを見る形にしてある。
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