裁量労働制とは、時間をみなす制度

裁量労働制は、実際に働いた時間を数えるかわりに、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとして扱う制度。みなし時間が8時間なら、10時間働いた日も6時間で切り上げた日も、どちらも8時間として賃金が計算される。対象になるのは2種類の限られた業務だけで、2024年4月からは適用に本人の同意が要る。

適用されている側から見ると、確かめる場所は3つ。みなし時間が何時間か、自分の業務が対象に当たるか、同意をいつ与えたか。

みなし労働時間は、1日単位でしか決められない

専門業務型は労働基準法第38条の3の制度で、業務の性質上その遂行方法を労働者の裁量に大きく委ねる必要がある業務について労使協定で対象業務などを定め、そこに就かせた労働者は協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなされる。企画業務型は第38条の4第1項。労使委員会の決議と、所轄労働基準監督署長への届出が要件になる。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、みなし時間の定め方に条件を付けている。1日あたりの労働時間数として具体的に協定すること、そして1週間単位や1か月単位の時間を協定することはできないこと。企画業務型でも同じで、指針第3の3が1日単位での決定を求めている。

みなし時間と実労働時間を一致させる必要はない。ただし相応の処遇の確保が求められ、法定労働時間を超える設定をする場合は36協定が必要で、超えた部分には割増賃金の支払いが要る。みなし時間が9時間と決まっているなら、毎日1時間ぶんの時間外労働が最初から発生している計算。

対象になる業務は、専門業務型で20、企画業務型で4要件

専門業務型の対象業務は全20業務。2024年4月施行の改正で、銀行・証券会社のM&Aアドバイザーの業務が加わり、19から20に増えた。研究開発、情報処理システムの分析・設計、取材・編集、デザインの考案などが並んでいる。

企画業務型は業務名を列挙しない。4つの要件をすべて満たすかどうかで決まる。

  1. 事業の運営に関する業務
  2. 企画・立案・調査・分析の業務であること
  3. 遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要が、業務の性質上、客観的にあること
  4. 遂行手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしないこと(時間配分には始業・終業時刻の決定も含まれる)

対象労働者の範囲にも条件が付く。対象業務を適切に遂行するための知識・経験等を持ち、その業務に常態として従事する労働者であることが求められ、新卒で職務経験がない人は対象外とされ、少なくとも3〜5年程度の経験を経たうえで判断される。

4番目の要件を裏返せば、始業と終業の時刻を会社が指示している状態は制度の前提から外れる。

2024年4月から、本人の同意が要件になった

同意は、労働者ごとに、かつ労使協定や決議の有効期間ごとに得られるものであることが必要。就業規則による包括的な同意は、個別の同意に当たらない。取得の方法については、口頭だけで済ませず書面や電磁的記録など確実な方法が適切とされている。

同意しなかった労働者に対する解雇、賃金減額、降格などの不利益取扱いは禁止。そして労働者は同意を撤回できる。協定で撤回を認めないと定めることはできない。

確かめる手がかりは、署名した同意書の控えと、その有効期間。

残業代は消えない。深夜と休日は実際に働いた時間で数える

休日労働と深夜労働の割増賃金は、みなし時間と切り離して、実際に働いた時間に応じて支払われる。休憩や年次有給休暇の規定も、通常の勤務と同じように適用が続く。「裁量労働制だから残業代はゼロ」という受け取り方をしていると、深夜まで作業した日ぶんの割増と、法定休日に出た日ぶんの割増が、両方とも手元から落ちる。みなし時間が法定の8時間を超えて設定されている場合も同じで、超えた部分の割増賃金は、みなし時間を協定した時点で毎日発生することが決まっている。

落ちやすいのは、この2つ。

みなしでも、労働時間の状況は記録されている

企画業務型では、労働安全衛生法第66条の8の3に基づいて労働時間の状況を把握する必要がある。健康・福祉確保措置は、対象労働者全員に対する措置を1つ以上、個々の勤務状況に応じた措置を1つ以上実施することが望ましい。

定期報告もある。決議の有効期間の始期から起算して初回は6か月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回、所轄の労働基準監督署長へ報告する。報告するのは、対象労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、同意および同意の撤回の状況。

みなし時間で賃金が計算されていても、実際に何時間働いたかの記録は別に残っている。開示を求める先がある、ということ。

採用している企業は、専門業務型2.1%、企画業務型1.0%

令和7年就労条件総合調査(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)では、みなし労働時間制がある企業の割合が15.8%。前年の令和6年調査は15.3%だった。種類別(複数回答)に割ると、事業場外みなし労働時間制が13.8%、専門業務型裁量労働制が2.1%、企画業務型裁量労働制が1.0%となる。

適用を受ける労働者の割合は11.8%で、前年の9.2%から上がった。種類別では事業場外みなし10.5%、専門業務型1.1%、企画業務型0.3%。

数字で見ると、裁量労働制は珍しい側の制度。みなし労働時間制がある企業15.8%のうち、専門業務型は2.1%、企画業務型は1.0%にとどまり、大半は、外勤の営業など事業場外で働いて労働時間の算定が難しい人を対象にした事業場外みなしのほうが占めている。

フレックスタイム制とは、本人が決めるものが違う

フレックスタイム制は始業と終業の時刻を働く本人が決める制度で、働いた時間そのものは実測し、清算期間の総労働時間で精算する。裁量労働制は時間を測るところをやめて、みなした時間で払う。似ているのは「出退勤が自由」という見た目の部分だけ。制度の中身はフレックスタイム制の定義と並べると分かれ目が見える。

制度の有無と、実際の裁量は別に数える

労使協定に裁量労働制と書いてあっても、会議の時刻が先に埋まっていて動かせる時間が少ない職場はある。診断では、制度の名前ではなく手元の自由度を聞いている。

いつ・どこで働くかを、自分で決められますか(当てはまるものをすべて)

  • 働く時間を自分で調整できる(フレックス・裁量労働など)
  • 働く場所を選べる(在宅・サテライトなど)
  • どちらもできない

当てはまるものをすべて選ぶ形にしているのは、時間と場所が別々に動くため。場所は選べないが時間は動かせる、という組み合わせも、その逆もある。1つの自由度として足し合わせてしまうと、どちらが効いているのか分からなくなる。

仕事の進め方をどこまで自分で決められるかは、時間の自由度とは別の軸として測っている。そちらは裁量権の定義のほうに書いた。

自分の職場で確かめる

記録しておくと後で効くのは、みなし労働時間の設定値、同意書の控えと有効期間、それに実際の出退勤の時刻。3つ目があると、みなし時間との差が月ごとに出る。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。時間と場所の自由度も項目の1つで、同じ職場の人の答えと並べたときのずれを見る形にしてある。

出典

  1. 多様で柔軟な働き方3 専門業務型裁量労働制とは/確かめよう労働条件(厚生労働省)
  2. 多様で柔軟な働き方4 企画業務型裁量労働制/確かめよう労働条件(厚生労働省)
  3. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)