裁量労働制の残業代が出る6つの場合

裁量労働制で残業代が出るのは、実際に働いた時間がみなし時間を超えたときではない。出るのは6通りの場合で、そのうち4つは深夜か休日に働いたかどうかで決まる。みなし時間を1時間超えて作業した日が20日続いても、その20時間ぶんの割増賃金は発生しない。深夜の1時間なら、発生する。

残業代が出る6通りと、何を基準に数えるか

場合 数える時間 割増率
みなし時間が1日8時間を超えて設定されている みなし時間のうち8時間を超える部分 25%以上
深夜(午後10時〜午前5時)に働いた 実際に働いた時間 25%以上
法定休日に働いた 実際に働いた時間 35%以上
時間外労働と深夜労働が重なった 実際に働いた時間 25%+25%=50%以上増し
法定休日労働と深夜労働が重なった 実際に働いた時間 35%+25%=60%以上増し
1か月60時間を超える時間外労働 60時間を超える部分 50%以上

厚生労働省の「確かめよう労働条件」が示している率をそのまま並べた。1か月60時間を超える時間外労働の50%以上について、中小企業に対する猶予は2023年(令和5年)4月1日に廃止されている。

表の1行目だけが、みなし時間から計算される。残りの5行は実際に働いた時間で数える。この分かれ目を押さえておくと、「裁量労働制だから残業代は付かない」という言い方が、6通りのうち1通りだけを指していることが見えてくる。

場合の数としては、付くほうが多い。

1時間当たりの賃金は、月給を1か月平均所定労働時間で割る

同じページが挙げている式は、月給額(各種手当を含んだ合計)÷ 1年間における1か月平均所定労働時間数。これで出た金額に割増率を掛け、時間数を掛ける。

月給額が300,000円、1年間における1か月平均所定労働時間数が160時間なら、300,000 ÷ 160 で1時間当たり1,875円。深夜に2時間働いた月に加わるのは、深夜割増の25%ぶん、つまり1,875 × 0.25 × 2 で937.5円。みなし時間ぶんの賃金は先に払われているので、上に乗るのはこの0.25の部分だけ。

みなし時間が8時間を超える設定なら、割増は毎日発生している

専門業務型裁量労働制について、厚生労働省は、みなし労働時間を1日あたりの労働時間数として具体的に協定する必要があり、1週間単位や1か月単位の時間を協定することはできないとしている。そして法定労働時間を超える設定をする場合は36協定が必要で、超えた部分には割増賃金の支払いが必要になる。

みなし時間が9時間と協定されていれば、出勤した日はすべて1時間の時間外労働。実際に7時間で終えた日も、9時間として扱われる以上は1時間ぶんが付く。

36協定の上限も効いてくる。時間外労働は原則として月45時間以内、年360時間以内。1年単位の変形労働時間制の適用者は、1か月42時間以内、1年320時間以内。

深夜と法定休日は、みなし時間と切り離して数える

休日労働と深夜労働の割増賃金は、実際に働いた時間に応じて支払われる。ここにみなし時間の規定は及ばない。だから深夜に3時間作業した日は、みなし時間が8時間でも9時間でも、3時間ぶんの深夜割増が発生する。

法定休日の要件は、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日。この要件を満たす休日に働いた時間が35%以上増しの対象で、それを超えて会社が置いている休日(週休2日制の2日目など)に働いた時間は、休日割増の側ではなく時間外労働の側で数えることになる。どちらに当たるかは就業規則の休日の条で決まるので、文面を見ないと判別できない。

深夜の記録を残しておく意味は、ここにある。みなし時間で賃金が計算される制度でも、何時から何時まで作業したかは割増賃金の額を動かす。

制度が成立していなければ、実労働時間で計算する

みなしの効果が及ぶのは、制度の要件を満たしているあいだだけ。要件は3つある。自分の業務が対象業務に当たること、労使協定(企画業務型は労使委員会の決議と届出)があること、そして本人の同意。2024年4月からは、同意が労働者ごと・有効期間ごとに必要になった。

就業規則による包括的な同意は、個別の同意に当たらない。同意しなかった労働者への解雇や賃金減額、降格といった不利益取扱いも禁止されている。撤回もできる。

要件が欠けていれば、残業代は実際に働いた時間で計算される。つまり、対象業務の要件を満たしていない業務に裁量労働制が適用されていた場合や、同意の手続きが踏まれていなかった場合には、1日8時間・1週40時間を超えた実際の時間ぶんが、まとめて時間外労働として残っていることになる。

確かめる先は3つ。労使協定の写し、同意書の控え、就業規則の労働時間の条。

固定残業代とは、超えた分の扱いが違う

固定残業代は、一定時間ぶんの割増賃金を先に払っておく仕組みで、その時間を超えた分は追加で支払われる。裁量労働制は時間そのものをみなすので、みなし時間を超えた実労働時間に対する追加は起きない。名前の似た制度で混ざりやすい部分は固定残業代の見方にまとめてある。

自分の職場で確かめる

残しておく記録は3つ。協定されているみなし労働時間、深夜の時間帯に作業した時間、法定休日に出た日付。これを4週ぶん書き出すと、表の6行のうちどれが自分に当たっているかが決まる。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。働く時間と場所の決まり方も項目の1つで、同じ職場の人の答えと並べたときのずれを見る形にしてある。

出典

  1. 時間外・休日労働と割増賃金/確かめよう労働条件(厚生労働省)
  2. 多様で柔軟な働き方3 専門業務型裁量労働制とは/確かめよう労働条件(厚生労働省)
  3. 多様で柔軟な働き方4 企画業務型裁量労働制/確かめよう労働条件(厚生労働省)