変形労働時間制は総枠を配分する制度

変形労働時間制は、繁忙期の所定労働時間を長く、閑散期を短く決めておく制度。1日8時間・1週40時間という原則の例外にあたり、変形期間の全体を平均して週40時間に収まっていれば、8時間を超える日を所定として組める。だから、9時間勤務の日に1時間ぶんの残業代は付かない。所定がそう決まっている日だから。

総枠は「40時間 × 変形期間の暦日数 ÷ 7日」で出る

厚生労働省の労働局が配っている資料では、この制度を「法定労働時間の総枠の範囲内で、業務の繁閑に応じてあらかじめ労働時間を配分する制度」と説明している。総枠の計算は、40時間に変形期間の暦日数を掛けて7で割る形。

31日の月なら40×31÷7で177.1時間、28日の月なら160時間。1年単位なら、365日で2,085.7時間が上限になる。この枠の中で、各日・各週の所定労働時間を会社が先に決める。枠を超えた分は時間外労働で、割増賃金の対象。

種類は3つ、フレックスタイム制は別の制度

種類 変形期間 手続き 業種・規模の限定 1日・1週の上限
1年単位 1か月超〜1年以内 労使協定の締結・届出 なし 1日10時間・1週52時間
1か月単位 1か月以内 労使協定の締結・届出、または就業規則の変更・届出 なし なし
1週間単位(非定型的) 1週間 労使協定の締結・届出 労働者数30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみ 1日10時間・1週40時間

1か月単位には1日・1週の上限が無い。資料が使いどころとして挙げているのは、月末や月初、特定の週が忙しい場合と、夜勤のように1勤務の労働時間が長いシフト制を運用する場合。1年単位のほうには上限があり、労働日数も1年あたり280日まで、連続して働かせられるのは6日まで(繁忙期として特定期間を定めた場合は、週に1日の休日が確保できる日数まで)。

フレックスタイム制は、始業と終業の時刻を働く本人が決める制度で、条文も別。就労条件総合調査では変形労働時間制の一種として数えられているが、誰が時間を決めるのかという点で中身が逆になる。

労働日と労働時間は、あらかじめ特定しておくもの

同じ資料に、こう書いてある。変形期間における労働日と、労働日ごとの労働時間をあらかじめ特定する必要があり、使用者が業務の都合でその都度任意に労働時間を変更する運用はできない、と。

1年単位では、特定した労働日や労働時間を任意に変更できないことが労使協定の要件として明記されている。対象期間を1か月以上の区切りで定める方式を採る場合でも、各期間の初日の30日以上前には、労働日と労働日ごとの労働時間を書面で決めておく必要がある。

「今月は忙しいから来週の所定を10時間にする」は、制度の使い方から外れる。

採用している企業は60.2%、適用されている人は50.5%

令和7年就労条件総合調査(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)では、変形労働時間制がある企業の割合が60.2%。前年の調査は60.9%だった。企業規模で割ると、1,000人以上が82.7%、300〜999人が76.1%、100〜299人が68.1%、30〜99人が55.3%。

種類別の企業割合(複数回答)は、1年単位30.3%、1か月単位26.4%、フレックスタイム制8.3%、1週間単位の非定型的1.1%。ところが適用を受ける労働者の割合で見ると順番が入れ替わり、1か月単位23.5%、1年単位15.7%、フレックスタイム制11.1%、1週間単位0.2%となる。1年単位を採る企業の数は多いが、そこで働く人数は1か月単位のほうが多い。

制度全体で適用されている労働者は50.5%。前年の52.3%から1.8ポイント下がっている。

自分の職場がどれに当たるかは、3つを見れば分かる

見るのは就業規則の労働時間の条、労使協定の写し、そして勤務カレンダー。1か月単位なら就業規則だけで導入できるので、協定が無くても制度は成立している。1年単位は協定が必須で、様式第4号で労働基準監督署へ届け出ている。

勤務カレンダーが対象期間の初めに配られているか、途中で書き換えられていないか。そこが、制度として運用されているかどうかの分かれ目になる。所定労働時間が日によって違うなら、実労働時間との差を日ごとに見ないと、時間外になった時間が出てこない。

自分の職場で確かめる

記録しておくと後で効くのは、配られた勤務カレンダーの写しと、実際に働いた時間。この2つが揃っていれば、所定を超えた時間と総枠を超えた時間を自分で数えられる。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。働く時間と場所の決まり方も項目の1つで、同じ職場の人の答えと並べて、どこがずれているかを見る形にしてある。

出典

  1. 労働法基礎講座 変形労働時間制(概要・種類・注意点)/厚生労働省 長崎労働局
  2. 1年単位の変形労働時間制(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
  3. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)