変形労働時間制のデメリットは4か所

同じ月160時間の勤務でも、割増賃金の対象が20時間から0時間に変わる。国土交通省近畿運輸局の資料に出ている例で、1週目と2週目が50時間、3週目と4週目が30時間という配分のとき、原則の1週40時間で数えれば20時間が時間外労働になるのに、1か月単位の変形労働時間制を採っていれば時間外労働は0時間。働いた時間は同じ。デメリットの出どころは全部ここにある。基準が、法定の8時間・40時間から、あらかじめ決めた所定労働時間のほうへ移ること。

制度が決めているのは、所定労働時間の配分

変形労働時間制は、変形期間を平均して1週40時間に収まる範囲で、各日・各週の所定労働時間を先に決める制度。総枠は40時間に変形期間の暦日数を掛けて7で割った時間で、その中なら1日8時間を超える日を置ける。

辞令やシフト表で「その日は10時間勤務」と決まっていれば、10時間働いても所定どおり。働く側から見ると、不利が出るのは次の4か所になる。

1. 割増賃金が付く線が、所定のほうに動く

1か月単位の場合、割増賃金の対象になる時間外労働は3段階で数える。

  1. 8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えた分、それ以外の日は8時間を超えて働いた分
  2. 40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える時間を定めた週はその時間を超えた分、それ以外の週は40時間を超えて働いた分(1で数えた時間は除く)
  3. 対象期間の法定労働時間の総枠を超えて働いた分(1と2で数えた時間は除く)

10時間の所定を組まれた日に11時間働けば、割増がつくのは1時間。原則の数え方なら3時間。この差が、繁忙期のある職場で積み上がる。

2. シフトは先に決まり、あとから動かせない

制度の要件として、変形期間における労働日と労働日ごとの労働時間をあらかじめ特定しなければならない。厚生労働省の労働局の資料には、使用者が業務の都合でその都度任意に労働時間を変更する運用はできない、と書いてある。

1年単位では、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更できないことが労使協定の要件に入っている。対象期間を1か月以上で区切って定める方式でも、各期間の初日の30日以上前までに、労働日と労働時間を書面で決めておく必要がある。

働く側にとっては両刃。急な予定変更に合わせてもらいにくい代わりに、会社が後からシフトを長い日に書き換える運用は、制度の要件から外れている。

3. 休日は、連続6日まで詰められる

1年単位では、1日の労働時間の限度が10時間、1週間の限度が52時間。対象期間が3か月を超える場合は、48時間を超える週を連続させられるのは3週以下で、対象期間を3か月ごとに区切った各期間で48時間を超える週は3回以下。

労働日数は1年あたり280日が限度。連続して働かせられるのは6日まで。ただし繁忙期として特定期間を定めた場合、連続して労働させる日数の限度は「1週間に1日の休日が確保できる日数」まで伸びる。

4. 期間の途中で辞めると、清算が入る

対象期間の途中で退職した人、途中で採用された人、配置転換された人は、実際に制度の適用を受けて働いた期間を平均して1週40時間を超えていれば、その超えた分の割増賃金を受け取る。労働基準法32条の4の2に基づく支払いで、退職の時点、または対象期間の終了時点で計算される。

繁忙期だけ働いて期間の途中で辞めた場合、閑散期で埋め合わせる前に区切られるので、ここが効いてくる。

配慮が義務づけられている人がいる

1年単位の制度を使う会社には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者その他特別の配慮を要する者について、育児等に必要な時間を確保できるような配慮をする義務がある。

満18歳未満の人は別扱いで、協定届にも該当労働者数と労働時間を括弧書きで分けて書く欄がある。根拠は労働基準法60条3項2号。

自分の職場の制度を測る3点

確かめるのは、就業規則の労働時間の条、労使協定か協定届の写し、そして勤務カレンダー。1か月単位は就業規則の変更・届出だけでも導入できるので、協定が無いことは制度が無いことの証明にならない。

令和7年就労条件総合調査(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)では、変形労働時間制の適用を受ける労働者の割合が50.5%。内訳は1か月単位23.5%、1年単位15.7%、フレックスタイム制11.1%、1週間単位の非定型的0.2%。働く人の数でいちばん多いのは1か月単位のほうで、上の3段階の数え方が関わる人がそれだけいる。

自分の職場で確かめる

手元に残しておくと後から効くのは、配られた勤務カレンダーの写しと、実際に働いた時間の記録。カレンダーが途中で書き換えられた履歴も含めて。この2つがあれば、所定を超えた時間と総枠を超えた時間を、自分で数えられる。

workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。働く時間と場所の決まり方も項目の1つで、同じ職場の人の答えと並べて、どこがずれているかを見る形にしてある。

出典

  1. 1か月単位の変形労働時間制(割増賃金の支払い・時間外労働となる時間)/国土交通省 近畿運輸局
  2. 1年単位の変形労働時間制(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
  3. 労働法基礎講座 変形労働時間制(概要・種類・注意点)/厚生労働省 長崎労働局
  4. 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省、2025年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業)