稟議(りんぎ)は、会議を開かずに、決める権限を持つ人へ書面を回して承認を集める手続きだ。段は4つ。起案して、決裁区分を書き、上の職位へ順に回し(回議)、関係する部署にも回して(合議)、権限者の決裁で終わる。この並びは、官公庁の処務規程に条文として書かれている。
よく並べて語られる決裁は、この最後の段だけを指す。稟議は過程、決裁は行為。
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稟議(りんぎ)は、会議を開かずに、決める権限を持つ人へ書面を回して承認を集める手続きだ。段は4つ。起案して、決裁区分を書き、上の職位へ順に回し(回議)、関係する部署にも回して(合議)、権限者の決裁で終わる。この並びは、官公庁の処務規程に条文として書かれている。
よく並べて語られる決裁は、この最後の段だけを指す。稟議は過程、決裁は行為。
稟議に入るのは、担当者の権限を超える事案について、書面で承認を集める過程だ。購買、契約、採用、押印、交際費。どれも「この金額で、この相手と、この条件で進めていいか」を担当者が文字にして、権限を持つ人が目を通し、判断を返すところまでが1つの手続きとして組まれている。
入らないものが3つある。会議体で議決して決める事案。口頭での了解だけで進めた事案。それに決済。決済は代金を受け渡して取引を終えることで、読みが近いだけの別語だ。
稟議と決裁の違いは、承認の数で見ると分かりやすい。稟議には複数の人の承認が積み上がる。決裁は、決裁権限を持つ1人がその事案を決める行為を指す。だから「稟議を上げる」と「決裁を取る」は、同じ1枚の紙の、別の段を指している。
社内の稟議規程は外に出ないが、官公庁や自治体の処務規程は公開されている。山梨県人事委員会事務局処務規程を例にとると、段はこう並ぶ。
起案について、第17条は「主任者は、その所掌する事務等に関して意思決定を受けようとするときは」と始まる。意思決定を受ける側が文書を作るところから手続きが動く。
次が決裁区分。第18条は「事案に関して決裁権限を有する者の職を決裁区分として表示しなければならない」と定めている。誰が決める事案なのかを、紙の上に職名で書く。ここが空欄のまま回り始めると、どこまで上がる案件なのかが決まらない。
回議と合議は第21条にある。「起案文書の回議は、意志決定に必要な最小限度にとどめるものとし」としたうえで、関係する部課長には合議しなければならないと定めていて、縦に上げる線と横に広げる線が1つの条文の中で並んで置かれている。回議が縦、合議が横。最小限度にとどめると書いてあること自体が、放っておくと増える性質のものだという前提を表している。
止まったときの扱いも条文になっている。第24条の代決は、決裁権限を有する者の押印すべき箇所に押印の上、その左上に「代」の文字を記載する形で、決裁権者が不在のあいだも手続きが進むように用意された抜け道だ。第2条には、専決することとされた事務は原則の例外になると書かれている。専決は、上位者の決裁を省いて下位の職が決めてよいと定めた範囲のこと。
稟議は、通ったか通らなかったかだけでなく、量として数えられる。測れる単位は4つある。
1つ目は承認者の数で、1枚の稟議書に判を押す人が何人いるかを数える。2つ目は決裁区分の金額の線、つまり何円までが課長の判断で終わり、何円から部長に上がり、どこから役員や取締役会の議題になるのかという段の切り方になる。3つ目は起案から決裁までの日数。4つ目は合議先の部署数。
この4つは、自分の会社の決裁権限規程(稟議規程、職務権限規程などの名前で置かれている)に書いてある。社内のイントラで見つからないときは、公開されている官公庁や自治体の規程と決裁区分表をいくつか並べて読むと、金額の刻み方と職位の対応という形そのものは共通していることが分かる。種類ごとに線が違うのも同じで、購買と採用と契約では、同じ金額でも上がる先が変わる。
起案から決裁までの日数は、自分の手元でしか測れない。申請日と決裁日を控えておくだけで、4件たまれば中位の日数が出る。
承認者が5人なら、自分の判断で動かせる範囲はその手前までになる。段が多い職場は、何をどこまで自分で決められるかの線がはっきりしている一方で、決められる範囲そのものは狭い。この線の引かれ方は裁量権とは何を自分で決められるかに書いた。
待ち時間は仕事の進み方に乗る。発注が3日後なら3日後の段取りで組むが、決裁が10日かかる職場では、起案の時点で10日先を見て動くことになる。差し戻しが入れば、そこからもう一度。やり直しがどこで生まれるかの切り分けはやり直しが多い仕事の原因にまとめた。
記録のほうは残る。誰がいつ承認したかが紙や電子の履歴に残るので、半年後に「この条件を通したのは誰の判断だったのか」を辿れるし、同じ型の案件を次に起案するときの前例としても使える。この性質が効くのは、判断の責任を1人で負いたくない事案のときだ。
段の多さに最適な数字はない。自分で決めて進めたい人には、承認者が3人を超えたあたりから待ち時間が重く感じられ、同じ判断を他人の手元で待つこと自体が仕事の密度を下げる要因になっていく。一方で、判断の根拠を他人と共有してから動きたい人には、合議の欄が材料の確認の場になる。同じ5段の稟議が、一方には遅さ、もう一方には安心として出る。
職種でも変わる。顧客の前で条件を即答する仕事と、設備や人員を長い期間で動かす仕事では、必要な承認の数がそもそも違う。「少ないほうが良い」とは言えない。
今週やれることは3つ。決裁権限規程を開いて自分の職位の線を読む。直近に自分が出した申請の起案日と決裁日を控える。合議先に名前が並んでいる部署を数える。この3つが揃うと、自分の職場の稟議が何段で動いているかが数字になる。
workprevu の診断は、職場の条件を12の項目に割って記録する。仕事の進め方をどこまで自分で決められるか、手順がどこまで決まっているか、確認がどれくらいの頻度で入るか。稟議の段の数と待ち時間は、この3つの項目に直接現れる。
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